伊藤佐千夫の『野菊の墓』を読みました。夏目漱石が絶賛したことで有名な作品だというので読みたい、というか読まなきゃ、と思いつづけていた小説ですが、先日詩人の荒川洋二さんが文藝作品紹介のようなものをラジオでやっていたのをたまたま聞いていたら、『野菊の墓』の話になって、やっぱり読んでみるか、と重い腰をあげた(finally made up my mind to read itですかね)のです。暑くて図書館へ行く気にもならず、アマゾンで注文するのも面倒なので、コクーン紀伊国屋に電話で問い合わせたら、『野菊の墓』なんておいてないというので、結局のところ縁のない作品なのだとなかば諦めかけていたとき、ひょっとすると青空文庫にあるかもしれないとひらめいて(came up with the ideaですかね)、さっそくのぞいてみると、案の定、ありました。ボランティアの方々には感謝以外ありません。伊藤佐千夫といえば明治の歌人だから、さぞかし古臭いのだろうと思い込んでいたのですが、漢文調でもなく、候文でも擬古文でもなく、言文一致運動の苦労の痕など微塵も感じさせないほど新鮮で、むしろみずみずしい滋味菊すべき(英語だとa wonderful workになりますかね)作品でした。伊藤佐千夫が影響を受けた「写生」というアプローチはガートルード・スタイン(Gertrude Stein)rose is a rose is a rose is a roseに匹敵するのではないか。そんな感想さえ抱かせる作品でした。