ミラン・クンデラが死にました。ずいぶん昔に場末の映画館で『耐えられない存在の軽さ』を観たのを思い出します。大宮の繁華街から少し外れたところにある、閑散とした映画館でした。(今もあるのかな?)チェコへのソ連軍の介入の前後を独特のスタイルで描いた作品でした。他国へ亡命しようとする人々、ソ連支配下に置かれ、お互いを監視し合うチェコ人の日常、その中にあって自由人トーマスの際立った存在ーーいろいろなことが脳裡に浮んできます。映画を観た後、英語に翻訳された原作(?)を読みましたが、小説というよりも哲学書のような感想を持ちました。あれから半世紀経った今、クンデラが描いた世界があたかも亡霊のように繰り返されています。チェコは長い冬の後、プラハの春を取り戻しました。ウクライナはそうあってはならないと思います。政治的駆け引きに現をぬかしている場合ではありません。今すぐにでもソ連の亡霊の桎梏から解放されるべきです。