name 「名を明かす」という意味の動詞があります。「なまえ」もnameも[n]の音ではじまるのがなんとも不思議です。Etymologyを調べてみると、Old English namanoma "name, reputation,"とありました。reputationという意味があったということから、 nameにはもともと「公になる(する)」という意味合があったことがわかります。そこから、a good nameというと「名声」といった意味ですし、a big nameというと「大物」とか「著名人」といった意味で使われるようになったのでしょう。Police have named the suspect.(警察は容疑者の名前を公表した) The hacking group Anonymous now says it will not name numbers of notorious Mexican drug cartel the Zetas. (今度のハッカー集団「アノニマス」は悪名高いメキシコの麻薬組織「セタス」に関係した名前を公表しないと発表した)(CNN) ところで、南無阿弥陀仏の「南無」ーーというより「ナム」、つまりnamuとはnameなんだそうです。尊いブッダの名前を唱えなさい、というのがナムアミダブツの本来の意味だとか。インドから中国を経て日本に入ってきた仏教語は本来サンスクリット語ですから、英語と関係が深いということでしょうか。

outstanding  「著名な,傑出した」という意味の他に「〈借金・支払いなどが〉未決済の,未払いの;〈問題などが〉未解決の,未決定の」といった意味で使われることがあります。この語を見ると、どうしてもremarkableの意味が浮かんでしまうので、注意しなければいけないと思っている単語のひとつです。ALTに訊ねたところ、支払いの期限から出ている,つまりstand outしているからunpaid の意味になり、解決の外にあるから、まだ解決されていないnot yet solvedの意味になるのだ、ということでした。まあ、そうなんでしょうが、意味のベクトルを「素晴らしい」というプラスのイメージから「まだ払ってないぞ!」と催促されるようなマイナスの方へと素早く向きを変えるには少々手間取る気がします。それも慣れでしょうが、ビジネスの世界と無縁に生きてきた者としてはしかたのないことかもしれません。Matsumoto Company has about 56 million yen of outstanding debt. (松本会社は約5600万の未払いの負債がある)There are still a couple of problems outstanding.(まだ未解決の問題が二三あるよ)(Cambridge)

step down 「辞任する」車から降りる、という意味もありますが、「辞任する」「辞職する」「引退する」という意味でも使われます。Cambridgeにはto give up a job or positionと相変わらず事務的な説明が載っていましたが、Collinsには If someone steps down or steps aside, they resign from an important job or position, often in order to let someone else take their placeとあります。コリンズの方がずっと丁寧で分かりやすいですね。つまり、普通のサラリーマンとか名もない労働者が辞める場合にこの句は使われないというのでしょう。文字通り高いところから降りるわけですから、地位の高い人が辞める場合にのみ使われると捉えればよさそうです。不幸にも上野駅でぼくにつかまった人の良さそうなアメリカ人旅行者が言うには、ダイレクトにresignという代わりに婉曲的にstep downを使うのだ、と説明してくれました。そういうニュアンスもたぶんあるのでしょう。The government says Yunus has to step down as head of Grameen Bank. (政府はユヌス氏はグラミン銀行の総裁を辞任しなければならないと言っている)(CNN) He stepped down in December. (彼は12月に辞任した) さてさて、トランプ大統領ははたしてstep down を宣言するでしょうか。民主主義の(彼の場合は個人主義でしょうか)後味の悪い、潔くない側面を見せつけられた選挙でした。しかし考えようによっては、日本のようにまずい資料は即刻シュレッダーにかけてうやむやにしようとしたり、選挙でこそこそと、しかし派手にお金をばらまいたりするのに比べれば、大統領であろうと誰であろうと、どこまでも言いたいことをあけすけに言えるアメリカは、やはりdemocracyの国だな、とも思いますが。

vandalize 「公共物などを故意に破壊する」語源は古代ローマ帝国を襲ったVandal(ヴァンダル人)に由来するそうです。Cambridgeにはto intentionally damage property belonging to other peopleとありました。他者の財産や資産や所有物に意図的に損害を与える、といった感じです。This suspect was caught on tape vandalizing three dealerships last month. (この容疑者は先月3軒の販売代理店を破壊しているところをビデオテープに撮られていた) All the buildings were torn down and the shrine was vandalized. (すべての建物は取り壊されて、聖堂も破壊された) このように公共物を壊すというニュアンスが強いのはローマ領内に侵入してきたゲルマン人の大移動のイメージが強いのかもしれません。 

contract「病気にかかる」語根のtractはtractor(トラクター)に出てくる「引っ張る」という意味。contractは共に(con)引き寄せる(tract)ことから「契約する」という意味でもっぱら使われますが、共に引き寄せて握手するというがcontractのイメージです。そこで病気と握手すると「病気にかかる」という意味で使われたりするので面食らうことがあります。They contracted the disease from transplants. (彼らは移植によって病気に罹った) He contracted pneumonia. (彼は肺炎にかかった) I contracted tuberculosis from my boyfriend.(ボーイフレンドから結核をうつされた)catchなどにくらべると、contract HIV とか  contract malaria など感染症のような重い病気にこの語は使われている気がします。UK.prime minister Boris Johnson contracted the coronavirus and was admitted to a hospital. (CNN)ということもありました。そのせいか、イギリスはいち早くワクチン接種を開始しましたが、一日もはやくコロナが沈静化してほしいものです。そして医療従事者の方々(その中には私の教え子もいらっしゃるかもしれません)には感謝の気持ち以外ないですね。

 

wholesome 「健康によい」「ためになる」 -someは「傾向」などを表す形容詞語尾です。語根のhalはhealthの意味だそうです。もともとhail(ハイル:すべてととのう)が祖語で、hail→hal→holと母音交替がおこり、それにwがついたのがwhole(全部)なのだそうです。健康になることは病気が完全に治ることですから、wholeとなり、それにsomeがついて「健康によい」といった意味になったようです。Cambridgeにはgood for you, and likely to improve your life either physically, morally, or emotionallyとありますから、肉体的にも精神的にも健康になるといった感じでとらえればよさそうです。He looks like a nice, wholesome young man.(彼は肉体的にも精神的にも健全な若者に見える。Cambridge) Japanese “azuki” is much more wholesome than American beans. (日本のアズキはアメリカの大豆よりもずっと健康によい) このようにwholesome food / mealのコンビで使われることが多いようです。A nurse in a big city hospital, Vicky knows the value of wholesome, home-cooked food for her family. (大きな市民病院の看護婦であるビッキーさんは、家族にとって健康的な家庭料理が大切でがあることわかっています) 反意語はunwholesomeです。マクドナルドのハンバーガーは今でもときどき食べますが、unwholesome foodの部類にはいるかもしれません。沖縄人の平均寿命を短くした元凶とも言われているくらいですから。いずれにしても、食べ過ぎはなんであれよろしくないようです。

cater to 「~の望みをかなえてやる」Cambridgeにはto satisfy a need or to provide what is wanted or needed by a particular person or groupとあります。必要なもの欲しいものを提供する対象は、すべての人ではなく、特定の人やグループだというわけです。前置詞toはpay attention to のtoと考えればいいのかなと思います。The magazine caters to wealthy people. (その雑誌は金持ち向けだ)(アドヴァンストフィエバリット)This hotel caters to foreign tourists.(このホテルは外国人観光客を歓迎する)このように金持ちとか観光客とか若者とか老人とか、特別なグループに提供するというニュアンスです。 Businesses that cater to well-off consumers are doing just fine, but that's not the case with those that have lower-income customer bases. (裕福な消費者の要求に応える企業は順調に営業していますが、低所得層の顧客基盤を持つところは、そうではない)  It is hard for a teacher to cater to every student’s needs in Japan. (日本では、教師が生徒一人一人の要求にこたえるのは難しい)